明治33年8月に改正された「小学校令」(明治33年8月20日勅令第344号)によって、明治期の高等小学校の課程はほぼ確定した。こののち第二次世界大戦後の学制改革まで、部分的な改変を除き基本的な編成に変更はなかった。
今回の小学校令改正では、小学校教則及び小学校編成に関する規定は文部大臣が定めることとなった(第28条)。このため、富山県独自の教則は廃止された。ただし、教科用図書の採定権は府県に残された(第24条)。
「小学校令」における英語に関する規定は以下の通り。
英語を加えることができるのは、修業年限が4年の高等小学校に限る。また、これを随意科目とすることができる(第20条)。
図画、唱歌、体操、裁縫、英語、農業、商業、手工からの1科もしくは数科目に限り教授する教員を専科正教員とする(第39条)。
これは、これらの教科を教える教員の多くが、師範学校以外の中等諸学校出身者であることをふまえたものと思われる。
教則・課程等については、小学校令改正に合わせて制定された「小学校令施行規則」(明治33年8月21日文部省令第14号)において規定された。
【教則】
第15条 英語ハ簡易ナル会話ヲナシ又近易ナル文章ヲ理解スルヲ得シメ処世ニ資スルヲ以テ要旨トス
英語ハ発音ヨリ始メ進ミテ単語短句及近易ナル文章ノ読ミ方、書キ方、綴方並ニ話シ方ヲ授クヘシ
英語ノ文章ハ純正ナルモノヲ選ヒ其ノ事項ハ児童ノ智識ノ程度ニ伴ヒ趣味ニ富ムモノタルヘシ
英語ヲ授クルニハ常ニ実用ヲ主トシ又発音ニ注意シ正シキ国語ヲ以テ訳解セシメンコトヲ努ムヘシ
【授業時数】
英語等を加えるときは他教科から毎週2時間を減らしてこれに充て、それでも不足する場合は男児に限って毎週2時間を加えてこれに充てる(第18条)。
【教員免許試験の程度】
府県が師範学校出身者に課す本科正教員の試験科目から英語を除外することができる(第108条)。
英語の専科正教員の試験の程度は師範学校生徒に課すものに準じる(第110条)。また、この試験には教授法を附す(同条)。
【学科配当表】
第一学年、読ミ方・書キ方・綴リ方・話シ方。
第二学年、読ミ方・書キ方・綴リ方・話シ方。
第三学年、読ミ方・書キ方・綴リ方・話シ方。
第四学年、読ミ方・書キ方・綴リ方・話シ方。
富山県の高等小学校の英語の教科書は、明治34年4月から、日本人が編輯した検定教科書を使用することになった。採用が決まった順に列記する。
【明治34年1月27日県令第4号】
宮井安吉編『小学英語読本』(Commomn School English Readers)、4冊、明治34年1月21日刊行、東京:金港堂。
【明治37年1月29日県令第5号】
アルネスト・パルシー・ルース、吉田潔著『小学英語教科書』(English Readers for Primary Schools)、4冊、明治36年12月18日刊行、東京:小林義則。
【明治41年4月1日富山県告示第86号】
文部省著『小学校用 文部省英語読本』(Mombsho English Readers for Elementary Schools)、第1巻、刊行年不明、文部省。
【明治42年4月30日富山県告示第114号】
文部省著『小学校用 文部省英語読本』(Mombsho English Readers for Elementary Schools)、第2巻、刊行年不明、文部省。
このうち、吉田潔の『小学英語教科書』が、『富山県教育史 上巻』p.461に掲載の小学校用英語教科書"English Readers for Primary Schools"の事であると思われる。
ちなみに、明治期に富山県の小学校で使用された教科書の多くが、上記英語教科書を含め旧富山市立図書館に収められていたが、昭和20年8月1日の富山大空襲によって灰燼に帰した。現在では、その88ページにのぼる手書きの『小学校用旧教科書目録』のみが、県立図書館に残されている。
この『小学校用旧教科書目録』によれば、英語の教科書としては他に次のものがあった。
佐伯好郎著『小学用新英語読本』(The New Primers)、4冊、明治36年10月刊行、東京:目黒書店。
Kambe Naokichi
神戸直吉著"A New Practical English Primer for Japanese Pupils in Primary Schools"、明治37年刊行、神戸書店。
文部省著『小学校用 文部省英語読本』(Mombsho English Readers for Elementary Schools)、第3巻、明治44年刊行、文部省。
今井信之著"New Century English Composition"、大正7年刊行、東京:興文社。
明治37年3月には「富山県師範学校附属小学校規則」(明治37年3月19日県令第17号)が改正された。
ここでは、英語の授業は高等小学校の随意科として多級において週2時間実施されることとなっていた。学科配当は公立小学校と同じで、ただし、「女児には英語を課せず」と注記されている。
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